[ 社会で生き始めるために  社会福祉法人 訪問の家 理事長 日浦美智江 ]

 訪問の家の最初の事業である「朋」が開所して早くも17年が経ちました。改めて年月の経つ早さを思います。この17年間には一口では到底いえない多くの出来事がありました。
 泣いたり笑ったり怒ったり、多くの人たちとの出会いと経験とから生まれるエピソードの数々。もし私が日記をつけていたらとても17冊では納まらないほどの感動を味わいました。命の強さ、そして同時にもろさ、生きることの厳しさ、だからこそ感じることができる、生きることのすばらしさ。生きているということから生まれる人としての無限の可能性。そして何よりも胸に残っている一人一人の澄んだ無心の笑顔、笑顔、笑顔。この朋という場所を得てともに過ごした年月と時間は私たちみんなにとってかけがえのない宝物だと思っています。
 重症心身障害児・者と呼ばれる人たちは言葉を持たない人がほとんどです。コミュニケーションの力が弱い人達です。そんな人たちと家族に一番近い存在として関わりながら、いつも感じてきたことはみんなの社会的な存在感の希薄さです。ある方が「この人たちに人格はあるの?」と言ったと聞きました。私はこの言葉を聞いたとき、この人に対する怒りよりみんなの存在がまだこの程度の認識なのだという思いの方を強くしました。時を同じくして法人の第三のグループホームへの反対が朋の間近な住宅の方々から起こりました。17年間この地で活動しながら、まだみんなの存在は特別な存在であり、もっといえばできるだけ遠くにいてほしい存在なのだと感じたとき、私自身の活動の甘さを思い知りました。人は他の人にその存在が認められて初めて人となるのです。認めてくれる人が多ければ多いほど大きな存在になるのです。私たちがその存在を認めているだけではみんなの存在は社会的に大きく強くはならないのです。私たちが感じるみんなの存在の大きさ強さを一人でも多くの人たちに感じてもらって初めてみんなは社会で「生き始める」のです。
 私はいつもみんなが地域で生きる上のセーフティネットは地域のあり方だといってきました。その地域への、社会へのアプローチをどこまで私たちは本気で行ってきたか、その術さえ未熟な私たちだと、悔しさと後悔のなかにいます。制度を変えるだけでは本当のノーマライゼーションはできないのです。
 私たちのドキュメンタリー映画「朋の時間 〜母たちの季節〜」が完成しました。この映画は私たちから社会へのメッセージです。心を込めたメッセージです。朋のなかで営まれているみんなと家族の人生を知ってほしいのです。親がこどもを愛し、こどもが親を信頼し、お互いに側にいてほしいと願う思いは決して特別なものでも、人格のない世界のものでもありません。この映画を一人でも多くの区民、市民、県民、そして大げさではなく国民の皆様に観ていただきたいと思っています。その努力をしていきたいと思っています。
 文字で書き、言葉で語ってきて、なお伝えきれないみんなの存在を、このドキュメントが伝えてくれると信じています。
 訪問の家の事業も多くなり、事業所としても大きくなりました。法人の根っこである朋もみんなの障害の重症化、親の方たちの高齢化、と大きな壁が目の前に現れています。その壁をどう乗り越えていくのか、法人の責任は重いことを痛感しています。日本で初めてできた重症心身障害児・者のための通所施設朋には、先を行くモデルがありません。創造しかないのです。その創造のためにも、みんなの存在を社会的に位置づけるための努力に法人全体で力を尽くしたいと強く思っています。



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