[ 映画は出会いからはじまる  監督 西山正啓 ]

  訪問の家 朋 との出会いは、映画「しがらきから吹いてくる風」全国巡回フォーラムの第1回上映会を横浜で開催した時、日浦美智江理事長(当時施設長)に実行委員会代表を務めていただいたことが縁である。1991年夏のことだから、もう13年になる。
 映画「しがらきから吹いてくる風」は、滋賀県甲賀郡信楽(しがらき)町で暮らす知的障害者と呼ばれる人たちを家族のように迎え入れた、小さな製陶所を経営するおっちゃん、おばちゃんたちの愉快な生活を7ヵ月間に亘り丹念に記録した作品である。この映画は1991年3月、西武デパート池袋店8階にあった多目的実験スペース「スタジオ200」で初公開して大入りの記録(8日間上映で6000人動員)をつくった後、全国巡回フォーラムという上映方式で全国各地を回り始めた。フォーラムは知的障害者の生活・就労の実態を映画とトークを通して広く知らせ福祉施策の向上を求めていこうという試みだった。トークには映画に登場した土鈴づくりの名人やいたずら好きの名人が厚生省の障害福祉課長と共にゲストとして招かれた。ステージでは横一列に並んだゲストによって、いつも上方漫才ならぬボケとツッコミのトークが展開した。ボケとツッコミといっても誰かが演出しているわけではない。それがふつうなのだ。トークは福祉を真面目に熱く語れば語るほど、最後には必ず土鈴づくりの名人によるどんでん返しが待っていた。
“さっきからしょうもないことばっかり言いよって”
 このひと言で他のゲストはずっこけ、会場はいつも爆笑の渦に包まれた。いまから思えば、自主上映活動は人情あふれるたぬきの里の風が全国各地を吹き抜けていった楽しいムーブメントだった。当時はまだ国のグループホーム制度が発足したばかり、利用する人たちのことを精神薄弱者、施設を運営する業界を精神薄弱者愛護協会と呼んでいた。
 横浜フォーラムの実行委員長を務めた訪問の家 朋 の日浦さんは映画が伝える人情あふれる信楽町の人々の在りように感動していた。映画のナレーションが障害者、福祉という言葉をいっさい使っていないことにも共感を寄せてくれていた。障害者の誰々さんではなく、土鈴づくりの名人の“喜彦”さんであり、イタズラ好きの“清さん”で呼びあう町が現実に存在しているからだった。
 親につけてもらった大事な名前でよびあう関係、そんな福祉をつくりたいのです。日浦さんは映画を応援する動機をこう説明されていた。
 朋に通うようになって、いつの間にか応援団の一人として朋の試みを人に話して歩くようになった。医療を必要とする人たちの地域生活を支え、生活の幅を広げる試み。地域医療と地域福祉の連携・統合にむけての試み。レスパイトやグループホームの運営を充実させることで年々老いてゆく家族を支える体制作りなど。全国各地の同じ境遇にある家族からみれば、羨ましくなるような実践が朋にあるのだ。日浦さんの講演会を九州各地で何回か主催したことがある。スライドを見せながら「朋の歴史と日中活動」を説明する日浦さんの話に、感動のあまり涙にくれる若い母親たちの姿を何人見たか知れない。自分の住む地域と朋のある横浜市栄区のあまりにも違う行政対応。暗い展望しかなかった将来に希望を見出したことの喜び。母親たちはスライドに記録された「人間的なる営み」を決して見逃してはいなかった。涙にははっきりとした理由があった。この母親たちは 朋 の映画を待っている。朋 のドキュメンタリー映画をいつしか自然に考え始めていた。

 2001年1月末、沖縄で「難病のこども支援全国ネットワーク」が主催する全国交流集会に日浦さんが招かれ基調講演をすることになった。日浦さんは1998年にムコ多糖症で亡くなった原 岳史さん(享年26歳)の一生を話すことになり、この沖縄行きには母親の原 順子さんがついて行くことになった。交流集会には読谷村から「象のオリ」の反戦地主で知られ、村議会議員をしている知花昌一さんが娘の未来世(みきよ)さんを連れて参加した。知花さんは知的障害がある娘の親として当時、「読谷村障害児を守る父母の会」の会長をしていたこともあり、朋の日浦さんとはすでに交流があった。原さんにとって沖縄ははじめての土地。知花さんの民宿にある旅ノートには原さんの感動が次のように記してあった。
「今回の旅は一生に何度あるかの、すごい出会いでした。こうして沖縄に来ることが出来たのも、知花さんに出会えたのも岳史のおかげです。岳史がつくってくれた出会いです」
 朋の撮影を始めてからすでに2年が過ぎようとしていた。原さんは岳史さんを亡くした後も、朋 に通って陶芸を楽しみ、時には若いお母さんたちの相談相手になっている。母親たちの心情にしっかり耳をあて、朋の母たちが歩んできた人生をまとめよう。まだ見ぬ映画が、私のなかではっきり形を現した沖縄への旅だった。

<全文は映画の公式パンフレットに掲載しています>



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